森祐治
2006/02/24 10:00
通信と放送のあり方について議論する竹中平蔵総務相の私的懇談会は、今後の「通信と放送の融合」の行方に大きな意味を持つ。一部では具体的な方策などへの言及がないことに不満の声もあるが、現在必要なのはより高い視点からの議論であろう。
知財戦略本部のシンプルで明確なゴール
政府知的財産戦略本部のコンテンツ専門調査会デジタルコンテンツ・ワーキンググループが、2月はじめに今後のアクションプランの目指すべきゴールを発表した(PDFの資料)。目指すところを「世界トップクラスのデジタルコンテンツ大国」とし、その具体的なあり方として「ユーザー」「クリエーター」「ビジネス」の3つのステイクホルダーにとってそれぞれの「大国」となることと提唱している。
これは、非常にわかりやすいゴール設定ではないかと思う。また、その具体化のための詳細は、資金調達の容易化促進やLLP(有限責任事業組合)など新しいプロフェッショナル組織制度の充実など、コンテンツをめぐる様々な政府施策とも連続性があり、ここ数年来の政府の行動と矛盾はない。
そのゴールを述べた報告書の一環として、放送という映像コンテンツの中核的な産業のあり方を振り返り、利用可能な有線放送事業者の有無に関わらず、直接電波が届かない地域でも地上デジタル放送を楽しむことができるように、IP通信網を用いた放送コンテンツの流通を可能にするために必要な著作権改正に言及している。
前述のゴール設定やこの著作権法改定の提言など、知的財産戦略本部という首相官邸直轄の組織ならではの、複数の組織に関連した問題を解決することに貢献する試みとなっている。
竹中懇談会へ注目が集まる
しかしながら、それでも解決できない問題もある。ゴール設定をいかに上手に行ったところで、依然として国内メディアそのものがボトルネックになる可能性があるからだ。
そういった問題意識からも、竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会(通称、竹中懇)」の動向に注目が集まっている。同時平行して行われている総務省主催の「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する懇談会」で民間から提案された「(通信)ユニバーサル回線会社」の議論について竹中懇談会メンバーが否定するなど、その立場はこれまでの政府における「私的懇談会」の枠にあるものとは異なっているようだ。実際、僕が出席しているいくつかの委員会や研究会でも、「竹中懇の動向を見て」といった発言が数多く行われている。
竹中懇が、一般に期待されたように「NHKやNTT、そして民間放送局の具体的なあり方」そのものに言及するのではなく、今後議論されるべき方向性を示すに留まっているのに対して、「時期を逃す」などとして残念がる声も多い。
しかし、竹中懇のように、そもそも放送と通信というこの国のあり方に極めて大きな影響力を持つ業界にここまではっきりと切り込む姿勢を示した政府系委員会は過去数年にほとんどなかったし、あったとしても(失礼ながら)局所的、もしくは近視眼的な方法論に限定されたものばかりで、「放送」や「通信」といった業界の定義やフレームワークそのものが変容しつつある現実に必ずしも最適化されたものではなかった。
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